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平成29年度一般施政方針

むつ市議会第231回定例会(平成29年2月22日)

はじめに

 「この国には何でもある。だが、希望だけがない」。
 これは、ちょうど私が働き始めたころの村上龍の小説『希望の国のエクソダス』の一節でありますが、この言葉について常に自問自答を繰り返してきました。
 むつ市に希望をもたらすことができるのか。むつ市民の皆様に希望をもたらすことができるのか。
 むつ市議会第231回定例会の開催に当たり、平成29年度の市政運営に臨み所信の一端を申し述べ、議員各位並びに市民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げる次第です。

むつ市長 宮下宗一郎

 

時代認識 ・ 社会情勢に関する所感

 今、世界は分断されつつあります。
 中東ではイランとサウジアラビアの対立に端を発する過激派組織ISの台頭により、シリアではこれまで東日本大震災の15倍以上の犠牲者が出て、そしておそらくこの瞬間も小さな命が失われています。
 ヨーロッパでは、経済格差を契機としたイギリスのEU離脱、難民問題が引き起こす各国での右派政権の台頭、パリをはじめとする主要都市でのテロ行為、そして公然と大使が殺害もされています。
 近隣の東アジアに目を向けても、弾道ミサイルを発射する北朝鮮、領土的野心をむき出しにする中国、本来自由と民主主義的価値を共有すべき韓国も歴史問題で我が国を辱めようとしています。
 最大の同盟国であるアメリカも新大統領の方針により、国際協調よりも国内重視の政策を打ち出し、予断を許さない状況になっています。
 世界は、緊張と、そして自由を標榜する我々にとって、ある種の絶望にも似た観測に覆われているといってもいいかもしれません。

むつ市の現状

 むつ市の現状をみると、平成17年の市町村合併以来、人口減少を続け、ついに本年1月に6万人を切ることになりました。このままいけば、あと15年後には市の要件となる5万人をも切ることになります。
 また、合計特殊出生率が1.67に対して、高齢化率は3割を超えておりこの差が自然減となってむつ市の経済社会を縮小へと向かわせます。
 さらに、市の平均寿命は、47都道府県の中でも最下位の青森県にあっても下位であり、全国の市区町村の中でも女性がワースト16位、男性がワースト8位となっています。
 そして、本市歳入の約3割を占める普通交付税は、市町村合併に係る特例加算の段階的減少により、平成26年度の交付額と比べて平成32年度には単年度当たり8億円を超える大幅な減額が想定されていることに加え、歳出の効率化を推進する観点から導入されたトップランナー方式によって、一層の業務改革が求められていることなどから、更なる減額の可能性があることに強い危機感を抱かざるを得ません。
 さらに、一部事務組合下北医療センターの大畑診療所が抱える不良債務約8億円の解消やむつ総合病院に対する債務負担行為約31億円の履行、国民健康保険特別会計が抱える約5億円の累積赤字の解消など、今後も多額の一般財源が不可欠な状況となっています。

予算編成方針

 このような現状を踏まえ、平成29年度予算編成におきましては、昨年8月に公表した「むつ市財政中期見通し2016~緊急健全化対策~」を前提とし、早期に歳入に見合った財政規模への転換を図り、「財政の健全化」を最重点事項として、全ての事務事業について既成概念や前例にとらわれることなく、選択と集中による徹底した見直しを行うことといたしました。
 その結果、平成29年度一般会計予算の総額は、328億6,000万円となり、前年度に比べ額にして5,400万円の減、率にして0.2%の減となったところであります。

主要施策

 このような現状においても、むつ市の成長を促し、希望を見出すべく重点施策についてとりまとめました。

しごとづくり

 まず初めに、人口減少対策に資するしごとづくりの予算として起業家ワンストップ支援事業、海外展示商談会・見本市出展助成事業、「新・三種の神器」商店街活性化事業などむつ市の地域経済の活性化にも資する元気の向上のための施策を展開してまいります。

まちづくり

 次に、暮らしの向上に資するまちづくりの予算として、新総合アリーナ建設事業、大畑庁舎移転調査事業、地域コミュニティ保全事業など、将来にわたって地域の礎となるハード・ソフト施策を展開してまいります。

ひとづくり

 そして、未来を切り開くひとづくり事業として、新聞を活用した学習への支援事業、未来人材育成奨学金プロジェクト、ICTを活用した特別支援教育研究事業、むつサテライトキャンパス事業など子供たちの輝く未来を応援する施策を展開してまいります。

子育て応援

 加えて、ゆりかごからの応援事業として、0歳児待機児童の解消のための施設整備に関する補助事業、キッズパーク運営事業、こんにちは赤ちゃん事業を実施し、こどもの国むつ市を目指す施策を展開してまいります。

健康づくり

 本市最大の課題といってもいい健康づくりについては、健康マイレージ事業、すこやかサポート事業所事業、健康チェッカーズ事業を実施し、併せて健診受診の環境を整えることで、本市発の『寿命革命』を目指すべく施策を展開してまいります。

安全安心

 さらに、市民の皆様に安心して暮らせる毎日を提供するため、大湊消防庁舎建設事業、常備消防車両整備事業、むつ市自主防災組織設立助成事業等を実施し、火災や災害に備えた万全の体制を整える施策を展開してまいります。

魅力の向上

 また、魅力のある選ばれるむつ市への転換を図るため、下北ジオパーク夢実現プログラム、イルカと人との共生によるふれあいビーチinむつわん、夢の平成号及び鯛島利活用整備事業等を実施し国内外からの交流人口と滞在人口の拡大を図るための施策を展開してまいります。

 

 このほか、認知症対策を含む高齢化対策など必要な施策を重点的に行いつつ、年度の途中であっても、積極的に交付金や補助金の活用を行い、市民の皆様に寄り添いながら実施していきたいと考えています。

結びに

 一つ一つの行動も、誠心誠意続けていると、いつか共鳴する人が現れ、行動が広がり、同じ思いが、つながりはじめる。これまでのジオパークなどの取組を通じて私自身が学び実感したことであります。
 分断の時代だからこそ、私たちはつながる必要があります。先行きが見えない不透明な時代だからこそ、私たちはつながる必要があります。
 市民の皆様がお互いにつながり、行政と市民の皆様がつながり、むつ市と他の地域がつながり、そして市場を介して私たちが世界とつながっていく。
 それぞれが片隅を照らし、そのあかりがむつ市を照らしていく。
 本定例会で提案させていただいております「むつ市総合経営計画」においては、PDCAサイクルの導入、アウトカム指標の設定、各種施策の関連付けを通じて、新たな行財政運営を目指すこととしています。
 連携と協働によるまちづくり元年として、成長するむつ市とむつ市役所を演出できるよう取り組んでまいります。

 

 米国の作家、トム・クランシーの言葉としてこのようなものがあります。
 Man is a creature of hope and invention, both of which belie the idea that things cannot be changed.
 人は、希望と創造の生き物であり、そのことが物事は変えられないということが誤っていることを教えてくれる。

 平成29年度予算案がもたらす変化が、むつ市とむつ市民の皆様の新たな希望となり、その創造力で、市民の皆様の笑顔が輝くことに期待をしています。
 笑顔輝く希望のまちへ、そのあくなき挑戦に取り組むことを宣言し、議員の皆様にはなお一層の御支援、御協力を賜りますようお願い申し上げ、私の所信の一端とさせていただきま

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